辻村 真貴
※インタビュアー:S
辻村:今日はよろしくお願いします。
S:それでは辻村先生、インタビューを始めたいと思います。まず、先生の現在の研究内容について説明していただけませんか。
辻村:水資源はとても大切だと思って、水循環の研究の中でも特に、地下水や河川水あるいは湧水湧き水の研究をしています。特に、そういう水がどこからやってくるのか、どのぐらいの時間かけてやってくるのか、どこを通ってやってくるのか、それを明らかにすることが主な研究テーマです。
S:もう少し具体的に教えて下さい。
辻村:はい。国内各地のフィールド(山梨県、茨城県等)の湧水等において、フロン類分析用のサンプルを収集するとともに、そのデータに基づき、平均滞留時間等の解析を行っています。特に、山梨県の釜無川流域を対象に、堆積岩、花崗岩、変成岩等の異なる地質からなった源流域の湧水について、平均滞留時間を推定し、その空間分布を検討したうえで各湧水の集水域における水貯留量を推定し、地質条件との比較検討等を行っています。
S:なるほど。
辻村:我々のSF6分析ラインを通じて、フロン類による年代推定が難しくても、過去10年程度の直近の年代でも、湧水等の平均滞留時間解析が可能になりました。SF6分析ラインは、気象研究所の大気分析用ラインとアメリカ地質調査所の水分析ラインを参考にして、フィールドにおけるサンプリングの利便性や分析数の最適化等も考慮して構築しました。現時点において、国内で湧水、地下水等のSF6分析・解析能力を有する機関は、数機関程度しかなく、本研究室の分析システムが、我が国における若い地下水・湧水の年代推定研究を推進させることが期待されます。
S:面白いですね。
辻村:そうですね。これまでの研究によって、平均滞留時間が50年程度以下の比較的に短い地下水や湧水の年代を精密に解析するシステムが構築されつつあります。既存のトリチウム等と併用することにより、年代解析精度をより向上させ、世界最先端の陸水年代分析ラボになることも視野に入ってきたと言えます。
-研究室について
S:先生の研究は難しいですけど、とても興味深いです。先生の授業ももっと頑張って理解したいと思います(笑)。さて、次の質問ですが、先生の研究室はどのような雰囲気ですか?
辻村:ええ、私の研究室の雰囲気ですか。ちょっと難しい質問ですね。(笑)
S:と言いますと?
辻村:えっと、今は卒論生から博士学生までは全部で20人程います。留学生が多く、そのうえ色々な国々から来ているので、インターナショナルな雰囲気ですね。日本人学生も、もちろん筑波大学の出身の学生もいますが、千葉大学、慶応大学、東京理科大学など他大学から来た学生も多く、非常に多様性がありますね。とても面白いと思います。
S:そうですね。いろいろな国からの学生たちですね。言語も多様でしょうね。
辻村:そうだね。セミナーをする時は、全員英語ではないですが、ただ日本人学生でも英語プログラムに所属している学生やEDLの学生も何人がいます。そういった学生は英語で発表するようにしています。それで大学院生は全ての発表資料は、英語で作ることをしています。もちろん。話すのは日本語であっても構いません。
-先輩の進路について
S:そのようなセミナーをしているのですね。皆さん素晴らしいですね。ちなみに、研究室の卒業生の進路について教えていただけませんか?
辻村:卒業した学生たちには色々な進路がありますが、最近は水ビジネス関係のグロバル企業で働く方が増えていますね。例えば、水関係で国土交通省の国家公務員とか、水道のビジネスを海外で展開するような企業とか、国際協力関係の企業や財団など、具体的にはJICAに就職する人もいます。また、留学生の一人は、帰国し母国の水資源ビジネス研究所に入りました。そして、筑波大学でポストドクター学生になる方もいますし、色々な会社の研究院のポストドクター仕事をやっている方もいます。
-学生に向けて
S:最後の質問です。先生の研究室に入りたい学生さんに向けて何かメッセージをお願いします。
辻村:そうですね。まず水に興味があることが、とても大事です。フィールドに出て実際に調査をしたり、観察をしたりすることも多いので、フィールドが好きな人に来てもらいたいですね。
S:フィールドですか?
辻村:はい。それから、色々な分野の学生さんがくるのは嬉しいのですが、論理的に物事を考え、ロジカルに人に説明する能力を身につけることがとても大切だと思います。ですから、そういったことができるポテンシャルのある方に来て欲しいですね。
S:確かにそうですね。ロジカルに考えること、説明することは、大学院生にとっては特に大切ですね。
辻村:そうだね。また私自身は、キャリアパスは多様であってほしいと思っています。日本では、博士後期課程でドクターを取った人は研究者や大学教員になることが多いように思いますが、私自身は学生たちがそうではない職業にもついて活躍してほしいなと思っています。博士を取って国際機関で働くような人をもっといっぱい育てたいですね。
S:辻村先生、本日はお忙しいところ、インタビューにご協力頂きましてどうもありがとうございました。
辻村:ありがとうございました。